方位や九星に統計的な裏づけはあるのか。「占いは統計学」が成り立たない理由
占いはよく統計学だと説明されますが、統計学の手続きとは別物です。二重盲検で行われた占星術の検証、方位学に査読研究が見当たらない現状、そして開運の効果測定が原理的に難しい理由を整理します。
先に結論
「占いは統計学だ」という説明は、統計学の意味で使うなら成り立ちません。
統計学は、母集団を決め、対照群を置き、手続きを先に決めてからデータを取り、外れた場合も記録する、という一連の作法を指します。九星気学や算命学は、この作法で作られたものではありません。
そして、筆者が確認できた範囲では、九星気学の方位判断そのものを対象にした査読付きの検証研究は見当たりません。これは「効果が無いと証明された」という意味ではなく、確かめられていないという意味です。この2つは違います。
「統計学」と呼ばれるときに欠けているもの
占術が統計だと説明されるとき、たいていは「多くの事例を見てきた経験の集積」という意味で使われています。経験の集積には価値がありますが、統計学が要求するものは別にあります。
| 統計学が求めるもの | 占術の実務では |
|---|---|
| 母集団と標本の定義 | 相談に来た人だけを見ている(選択バイアス) |
| 対照群 | 「方位を無視して引越した人」と比べていない |
| 事前に決めた測定項目 | 「開運した」の定義が事後に決まる |
| 外れた事例の記録 | 外れた相談者は再訪しないため記録に残りにくい |
| 事前登録された仮説 | 結果を見てから解釈を足せる |
いちばん重いのは対照群と外れの記録です。当たった事例だけが手元に残る仕組みになっているため、事例が何万件あっても精度の証拠にはなりません。
実際に検証された例:占星術の二重盲検
方位学ではありませんが、占術の近縁である西洋占星術には、有名な検証があります。
1985年に Nature 誌に載った Shawn Carlson の「A double-blind test of astrology」です。複数の占星術の専門家が、出生図と、心理検査や経歴をまとめた被験者の資料とを突き合わせるという設計で、どの図がどの人物かを分からなくした二重盲検で行われました。
論文の結論は、専門家による判定は偶然の水準を超えなかったというものでした。
ただし公平のために書いておくと、この研究の解析方法には後年の再検討による異論があります。設計や統計処理が適切だったかをめぐって、支持・反論の双方が出ています。一本の論文で決着した、という書き方はできません。
ここで押さえたいのは結論の向きより、この形の検証が可能であるという点です。設計を決め、盲検にし、外れも数える。占術の主張であっても、検証にかけること自体はできます。
なぜ「開運」は測りにくいのか
では方位でも同じ検証をすればよい、となりますが、ここに実務上の壁があります。
何を測るのかが決まりません。
- 「運が良くなった」を数値にできない。年収か、健康か、主観的な満足度か
- 効果が出るまでの期間が定義されていない。3か月か、3年か
- 引越しの結果は、通勤時間、家賃負担、住環境、人間関係の変化といった測定可能な要因で大部分が説明できてしまう
- 良い結果が出れば方位のおかげ、悪い結果が出れば「起点の取り方が違った」「仮吉方だった」と事後に説明を足せる
4番目が特に重要です。どんな結果が出ても説明できる主張は、検証にかけられません。これは占術に限らず、反証可能性という科学哲学の基本的な論点です。
「当たった」と感じる仕組みは分かっている
一方で、当たったという感覚がどう生まれるかについては、心理学の側に確立した説明があります。
| 現象 | 内容 |
|---|---|
| バーナム効果 | 誰にでも当てはまる曖昧な記述を、自分だけに当てはまると感じる |
| 確証バイアス | 信じたい内容に合う情報を優先して受け取り、合わない情報を軽く見る |
| 事後解釈 | 起きた出来事のほうを、あらかじめの説明に合うよう読み替える |
十文字学園女子大学の「錯思コレクション100」は、バーナム効果を認知バイアスの一つとして解説しています。
これらは、統計的な裏づけが無くても「当たる」と感じられることを説明します。逆に言えば、当たると感じたことは裏づけの証拠になりません。
それでも歴史的な検証には意味がある
学術の側で研究が無いわけではありません。ただし対象が違います。
「方位判断が効くか」ではなく、「方位判断がどう社会に組み込まれていたか」を扱う研究は、歴史学・民俗学の領域に蓄積があります。平安期の陰陽寮と方違えの実態、暦の作られ方、明治政府による陰陽道の禁止といった主題です。
つまり制度と文化の対象としては学術的に研究されており、効果の検証としては研究が乏しい、という状態です。この区別を混ぜると「学術的に認められている」という誤った言い方になります。
歴史の側は九星気学と方位はどこから来たのかにまとめました。
Cloud Palette の立場
このサイトは方位や時期の判定を計算しますが、その判定が現実の結果を良くすることを主張していません。やっているのは、複数の体系の規則に沿って条件を整理し、比較できる形にすることです。
だから同じ画面で、測定できる条件も一緒に並べています。
- 家賃と相場の差
- 通勤・通学の所要時間
- 立地の条件
物件を方位で探すが方位と家賃を同じ表に出しているのは、この2つが性質の違う情報だからです。家賃の差は検証できます。方位の吉凶は検証されていません。同じ重さで扱わないほうが、判断を誤りません。
まとめ
- 「占いは統計学」は、統計学の作法を踏んでいないため成り立たない
- 占星術には二重盲検の検証例がある。結論は偶然の水準を超えなかったが、解析には異論もある
- 九星気学の方位判断そのものを対象にした査読研究は、確認できた範囲では見当たらない
- 「開運」は測定項目を定義できず、事後解釈を許すため検証にかけにくい
- 当たったという感覚は、バーナム効果と確証バイアスで説明がつく
- 歴史・民俗の対象としては学術研究がある。効果の検証とは別の話
確かめられていないものを、確かめられているかのように扱わない。そのうえで使うかどうかは、利用者が決めることだと考えています。
注記
九星気学・算命学・四柱推命は伝統的な占術上の考え方であり、効果が科学的に確認されたものではありません。Cloud Palette は計算条件を整理する道具で、将来の出来事を保証するものではありません。